2022〜2023 お仕事履歴
◾️ゲーム◾️
【廻らぬ星のステラリウム】
世界観協力・プロット・一部シナリオ制作
2017~2020年 お仕事履歴
【お仕事履歴】
◼️ゲーム◼️
【本編関連】
・恋愛幕末カレシ~時の彼方で花咲く恋~
⎿世界観・キャラクター設定制作
└土方歳三本編/監修(2017
⎿一橋慶喜本編/プロット・監修(2017
⎿一橋慶喜・彼目線本編/プロット・監修(2019
⎿沖田総司本編/プロット・監修(2017
⎿沖田総司・彼目線本編/プロット・監修(2019
⎿山崎烝本編/プロット・監修(2018
⎿原田左之助本編/プロット・監修(2020
⎿大久保利通本編/プロット・監修(2020
⎿山崎烝 推しカレがちゃ・執筆・監修(2018
└山崎烝 フルボイスシナリオ プロット・監修(2019
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└その他2020年までの恋愛幕末カレシのイベントシナリオプロット・総監修(詳細はお問い合わせください)
◼️アニメ◼️
・テレビアニメ BAKUMATSU
・テレビアニメ BAKUMATSUクライシス
└原案監修
■ラジオ■
イキザマラジオ原案監修(第1回〜現在まで)
◼️その他 スキル◼️
└ゲーム音声台本作成・収録立会い、ディレクション
└ゲーム内背景指示書作成
└ゲーム内スチル指示書作成
⎿2017年6月 幕カレディオ 君の心に御用改め〜 番組内ミニドラマ制作
└テレビアニメBAKUMATSU
ウェブサイト内ショートストーリー《邂逅前夜》執筆(龍馬・以蔵を除く)
チェス擬人化・落書き供養。2012年
図書室の灯りが消されることがない夜。そういう日は決まって彼がお気に入りの書物に齧りつき、あらゆる人払いをしているのだ。
ただでさえ気候の温暖でないこの国で、厚着もせずに一晩を過ごすというのは酷く体に負担をかける。丈夫で病気を知らない屈強な男でさえも不調を訴えてしまうような冷え込む夜を、けして体の強くない彼が過ごそうとすれば結果など分かりきっている。
それでも彼は時折こうやって一人で図書室に篭ってはまるでとり憑かれたかのように書物をひとりで紐解き続ける。
それはもしかすると普通の人間が食事をし、睡眠をとる欲求と同じで、彼にとっては必要不可欠な生理的現象にも思われた。だからといって、彼が体を壊すのを甘んじて見過ごすことは出来ず、こうして私は毎回彼の無謀な夜更かしを止めに行くのだけれど。
「身体を壊しますよ、陛下」
大理石の床と石造りの壁。国有の書庫とあって広大な面積を誇るその中で一人、彼は膝掛けひとつも掛けずに積み上げた本を消化していた。顔を上げた彼の黒い瞳には手元のランプの光が写り込んでまるで黒い水晶に炎が灯ったかのように見える。美しいけれど、人をけして寄せ付けない……それは私には孤高の宝石のようにも思えた。
「エル、か」
小さな声で確かめるように名前を呼ばれて返事をすると、彼はひとつ深い溜息をつき、それから小さく微笑んだ。
ゆっくりと手元の本を閉じると自分の息で氷のように冷えた指先を温め、彼は今更のように寒さを口にする。
「随分冷えるな」
「ええ、凍ってしまっているのではと心配しました」
手元にあった厚手の上着を彼の肩にかけると、彼の身体が小さく震えていることに気づき思わずため息が出る。
「震えるほど寒いというのに貴方は本を読んでいると全く気付かない」
「悪かったよ、こればっかりは癖なんだ」
席から立ち上がろうと彼が机に手を付いた時、彼の身体が僅かに傾いで、慌てて私は彼の身体を支えた。
「全く…脚が痛むのにも気づかなかったのですか」
「はは、すまない。今夜は暖かくして眠るよ、大人しくね」
彼は私の胸元に手をついて身体を支え直すと、ゆっくりとした速度で部屋への道を辿りはじめる。
「すぐに追いつきますから、転ばないでくださいよ、陛下」
「子供じゃないんだがなあ」
わかったよ、エル。
そう笑って歩き始めた彼の後ろ姿を見つめながら、私は机の上に残された数冊の本を手にとった。
この本を棚に返して彼を早く追いかけなければ。
「兄のくせに、心配ばかりかけるんですから」
【小説】Queen(1)【チェス擬人化】
1話目にあたるKingのお話はこちら↑から。
2話目はQueenのお話です。
先王がエルネストを城へ招くまで、エルネストは、自分が城下にいる平凡な子供のうちの一人であるということを、信じて疑わなかった。
のちに優秀な宰相として名を残すことになる彼は、城に召喚されるまで街の一角にある小さな煉瓦造りの家で育った。
食うに困るほど貧しくはなく、けれど蓄えを作るほど豊かでは無い。特徴といえば、この家には大黒柱になるはずであろう父がいなかった。エルネストは、母とふたりで生きていた。
エルネストは、父の姿を知らない。物心がついた時から家にはいなかったし、写真の一枚だってなかった。
一度だけ、母に父のことを聞いたことがあったけれど、何も言わず穏やかに微笑むだけの母に、エルネストはそれ以上なにかを聞くことはできなかった。
ただ、母は、口を閉ざしてしまったエルネストに、あなたの父はとても頭がよく、立派な方だとだけ言った。
エルネストの母は、優しくて穏やかで、野に咲く花のように穏やかだった。
病弱な母は、エルネストが本を読み、新しい知識を蓄えるたび彼のことをよく褒めた。
『あなたを誇りに思うわ、エルネスト』
母のそんな言葉を聞きたいがためだけに、幼い彼はたくさんの本を読み、覚えたばかりの学問を母に披露した。けして、勉強が好きなわけではなかったけれど、与えられるその言葉が、頭を撫でる手の温かさが、エルネストにとってはなによりの褒美だった。
けれど、十になる直前、母は死んだ。
花が命を散らすように、あっけない死だった。
母が死んでから、けして裕福ではなかった家からはパンが消え、次に薪が消えた。
寄る辺のない、幼いエルネストを助けてくれる者はなく、皆彼が街へ出ると哀れみの言葉をかけ、そして目が合うとそそくさと家へ戻った。
食べ物が消え、家の灯りがなくなり、生きるためにエルネストはわずかな家財を売った。
小さな宝石は毎日の食事に変わり、最後に残ったのはたったひとつ、母が編んだ毛糸のケープだけだった。
寒さに震えるエルネストは毎晩それにくるまり、長い夜を過ごした。
一つ夜が過ぎ、二つ夜が過ぎ、薄汚れたその布が、冬の寒さに耐えきれなくなってきた頃、エルネストのもとに一人の男が現れた。
豪奢な服を着たその男は、自分を『国王エルンスト・エーヴェルヴァインの使者』だと言った。
初めて足を踏み入れた王宮は、この世のものとは思えないほど美しかった。
大理石の床、アーチ型の高い天井、窓にはめ込まれたステンドグラス。城下にはないものが、そこには全て揃っていた。
なぜ、ここに連れてこられたのか、エルネストは教えてもらうこともなく、そこに暮らすことになった。与えられたのは、今まで母と暮らしていた家よりも大きな部屋と、侍女が二人。着替えも、食事も、もう困ることはなかった。
「エルネスト様、お食事の準備ができました」
恭しく頭を下げられ、エルネストは食卓に着く。並べられた食事はどれも見たことがないくらい豪華なものだったけれど、スープは冷たく、食器が音を立てるたび、広すぎる部屋に音が響いた。
「ごめんなさい、食べるのが下手で」
「いいえ、エルネスト様。これから学んでゆけばよろしいのです」
侍女はそう微笑んでくれたけれど、エルネストはうまく笑えなかった。
少し乾いたパンを温かいスープに浸す……そんな質素な食事が恋しいと、エルネストは思った。
王宮に入って数日、大人ばかりに囲まれて過ごしていたエルネストは、退屈を持て余してついに部屋を抜け出した。見つかれば叱られるとわかってはいたけれど、静かな部屋に閉じこもっているだけでは、気が狂ってしまいかねなかった。
(庭へ行ってみようか、それとも……この広い宮殿をすみずみまで探検してみようか)
出来るだけ音を立てないように慎重に、エルネストは廊下を駆けた。そして、とある立派な部屋の前でひどく興味深い情報を手に入れた。
『ここには、自分と同じ年頃の男の子がいる』
その情報は、豪華な食事や、暖かな毛布よりもずっとずっとエルネストの心を震わせた。
男の子の名前は『ヴィルフリート』
彼は、どうやら長くこの王宮に住んでいて、しかもエルネストの異母兄にあたるらしい。
(お母さんがいなくなって、ひとりぼっちになったと思った)
(でも、今の話が本当なら……その人は、僕のお兄ちゃんだ)
部屋を出るだけでも叱られるのだから、会いに行ったりしたら、ただ事ではすまない。そうはわかっていても、自分にまだ見ぬ家族がいるかと思うと、エルネストは好奇心を抑えきれなかった。
(会いに行こう、ヴィルフリートに)
エルネストは小さな手のひらを握りしめ、静かに部屋に戻った。
決行は、明かりの少ない、次の新月の夜に決めた。
【シナリオ雑記】長編のお話
シナリオライターをやり始めて、いろんな長さのシナリオを書いてきた。
短いものだと1本500字、長いものだと1本約15万字。どれもゲーム内で配信される大切なシナリオであることには間違い無いのだけれど、やっぱり得手不得手というのはある。
私が、どうやら自分は長編が苦手らしいと気づいたのは長編を4本書いたあたり…ライター生活3年目くらいだったと思う。
私の場合、15万字のシナリオを『素案▶︎プロット▶︎本稿 』と仕上げていくのだけれど、期間は約2ヶ月。週休2日で書くと、約40日で完成まで持っていく必要がある。
ちなみに歴史ものや特殊な職業ものについては、下調べも込みでこの時間で、多少スケジュールが倒れることもあるが基本的にはこの期間、私は長編以外の作業を全てストップする。
長編は、 いわば人ひとりの人生を作る、ということだ。とにかく細やかに気を遣わなければならない。長い分、適当に組み上げることもできない。辻褄を合わせるのもなかなかに大変だ。
けして作家としてこの作業が嫌いなわけではないのだけれど…弊害として、私は長編をやっているとどうしても体調が悪くなる。
眠れない。眠れても仕事が終わるまでは常に頭が起きているようなそんな感覚が2ヶ月続く。わりと気が狂う。
ライターには、第三者目線で冷静に物が書けるタイプと、神経が世界感に引きずり込まれるタイプがいる、と思っている。
どちらかというと、私は後者だ。セリフの助動詞1つで吐くほど悩む。
パソコンの前に座り、モニターを見るというよりは、その奥の世界を見る。
目の前で行われているアニメーションを全て書き取っていくようなかんじだ。会議の速記者に近い。
ただ、そうなるにはスイッチが必要で、私の場合は素案を書く前に、頭を一度現実世界からフィクションに切り替える必要がある。
切り替え方は簡単で、全てのインプットをやめる。出来る限り他の人が書いた文章は読まない。見ない。
資料を叩き込む以外の全ての情報を頭から追い出して、いわば精進潔斎した状態で挑みたいのだ。
朝、起きたら仕事場に行くまでは毎日同じ曲を聴く。音楽で頭を「長編を書くぞ」モードにし、仕事場に着いたらいきなり原稿に向かう。
これを繰り返すこと2ヶ月。できるなら、服も選びたくないし、全神経を長編に向かわせたい。
化粧なんて文明は長編の前では死んだも同然だ。友達と遊び倒す日以外にするものか。そんなことにカロリーは使えない。
アスリートみたいだねと言われたことがあるが、わりと近いのかもしれないな、と思う。でもそうしないと書けないのだからやらざるを得ないのだ。
私は、たぶん他の人よりも数倍飽きっぽい性格で、2ヶ月同じ長編を書くという作業自体に向いていない。
「あんたの顔なんか見たくない!」と1日長編をほっぽり出す日もあるし、ぜんぶボツにして書き直したいという感情とも常に戦っている。
長編を毎日コツコツ書いてる人、気が狂わずに書ける方法があるのなら教えてほしい。と思うくらいにできない。
そんなこんなで、吐きそうになりながら40日かけてお話を産む。十月十日よりはだいぶ短いけれど、それでもいろんなところがぼろぼろになる。
そんなとき、壊れかけた身体にあたたかい感想がしみて、もう2度とやりたくないと思うのに、また書いてしまう。たぶん、これはもう中毒だ。
長編が嫌いだ。苦しいし、悲しいし、めんどくさいし。とあるキャラクターの手紙を書いている時なんか涙が止まらなかった。
でも、ジブリの偉いおじさんが言っていた。
世の中の大事なことって、たいていめんどくさいんだと。
だから、めんどくさい、やりたくない、嫌だ。と言いながら、たぶんまた次もやるのだ。
私は長編が嫌いだけれど、きっと。誰かの感想が届く限り、書き続けてしまうのだ。
【シナリオ雑記】雑味とうまみ
セリフがうまく書けなくて、現在進行形で「ぐあああ!」となっている今、ちょっと気晴らしにシナリオ中のセリフについてちょっと私の考えを書いてみる。
もしライターになるために勉強中の人が読んでいたら、ごめんなさい。
これはもう私の書き癖であり、私が良いと思っているセリフという狭い世界での話なので、教科書にはしないでほしい。
なんども言うが、このブログはライター沼の端っこに生きている人の独り言しか書いていない。
私は女性向けゲームシナリオで「良い」と言われるシナリオは「セリフだけ読んで状況がある程度わかるものだ」と言っていた時期があった。
約6年前の私がライターになった頃のシナリオと比べて、圧倒的に女性向け恋愛ゲームのシナリオのト書きは減って、お客さんが1話を読むテンポが上がったとそう思っているからだ。
そこにはきっといろんな理由があるんだろうけれど、私も実際物語を書くときには7割くらいがセリフになるように気をつけていて、なぜそこまでたくさんの量をセリフにするかと言われると、それはト書きばかりだと彼の立ち絵(イラスト)が表示されなくなってしまうからだ。
出来るだけ、お客さんの目の前にイケメンが現れるようにしたい。だって読みながら泣いたり笑ったりするけど、根本はそういうゲームだもの。
まあ、シナリオ中のセリフの分量の増減はだいぶあったが、この6年いろんなセリフを書いてきた。プロポーズの言葉なんて何種類作ったかわからないし、たぶん愛してるよって言わせた回数は日本でもゆびおりなんじゃないかと思う。
でも、正直な話。
ずーっと1つのジャンルで執筆を続けていると、やっぱり綺麗な、耳当たりの良い言葉っていうのは…飽きるのだ。
「君を愛しているよ。私のお姫様」
まあ悪くはないが…文字の綺麗な並びは、言うなれば教科書の文字だな、と私は思う。
私がほしいのは教科書や文芸本に載っている美しい文字の羅列ではなく、普段駅を歩いているときに聞こえてくる会話だったり、ファミレスの友達同士の会話だ。
そこにはどもりがあって、思考があって、会話中にさまざまな不整合が起きている。
私は生きた、そういう口から出たばかりの言葉が大好きで、その温度を書きたいと思っている。だから、たぶん私の書くシナリオには雑味が多い。
綺麗な文章を好む人からしたら、たぶんいらない「あ、」であったり、いらない「っていうかさ」だったりするのかもしれない。
でも、その雑味の中にキャラクターの性格があると、私はどうしても思ってしまうのだ。
テンポよく進んで、まるでその場所にいるように感じられて、あれ、もう一回あの人と喋りたいなあ。そんな風に思えるセリフが書きたい。
できるなら、台詞から声が想像できるくらいにリアルで、雰囲気のあるセリフが書きたい。
いつもそんなことを思いながらキャラクターのセリフを作っていて、そして毎日悩んでいる。
世の中に送りこんだ作品の中で、もしもあなたの心に刺さるセリフがあったなら、それは私にとってとても嬉しいことだ。
そして、もし機会があったら私にこっそり教えてほしい。
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