職業 魔法使い

菊衣千花いうPNで、女性向けアプリゲームのライターをしています。執筆履歴を残すために作ったブログですが、時々とりとめのないことも呟きます。

シナリオライター6年生①

▪️まえがき▪️

2012年の9月にシナリオライターとしての一歩を踏み出してから約6年…。

まさかこんなに長い時間をこの世界で過ごすなんて思っていなかったのだけれど、

クリエイターとして生活も落ち着いてきたし、少し過去のことを振り返ってみようかな…と考え、今、筆を執っている。

個人的なことではあるけれど、引っ越しをしてから私生活の中に「移動」という比較的無駄な時間が多くできてしまい…これをなんとか「無駄」から「有意義」に変えたい気持ちがあったのだ。

ゲームにも飽き、本でも読むかと思ったのだけれど、正直あんまり好きではない。

そこからグダグダ色々考えて…あ、そうだ…私も物書きの端くれ、書けばいいんじゃないか。と思い立つまでが非常に長かった。びっくりするほど思いつかなかった。

 

そんなわけで、これから書くのは、本当にとりとめのない、移動中の私の独り言だ。

私の作ったものが好きだけれど、綺麗な理想の中の人でいてほしい、とか…ライターという仕事にキラキラの夢を見ていたい人にはあまりおすすめしない。

同じく時間を持て余した少しの人に、チラシの裏の感覚で読んでもらえたなら、もうそれだけで私にとっては十分なことなのである。

 

▪️シナリオライターになるまで▪️

 

「◯◯というコンテンツのシナリオライターをしています、菊衣です」 

 

最近はこのかたちの挨拶にもずいぶん慣れてきたが…私は最初の頃、シナリオライターと名乗るのがとても苦手だった。

作った製品が文字であるゆえに、

視覚に訴えかけることができるイラストや造形物よりも、お客さんが「モノへのインパクト」を感じにくいし、「なんかすげえ!」感が正直、ない。

文字なんて誰でも書ける、と言われてしまえば「その通り」以外の言葉が出てこないし、

今も、普通に会社員をしている友達の前でシナリオライターやってる…とはちょっと言いにくい。(たぶんほぼ自由業に見えてしまう)

そうそう、親は私がシナリオライターであることを半分くらいしか認識していない。

たぶん担当させていただいたコンテンツがアニメ化したなん聞いたら、ポカーン…とするだろうな。いつ言おう。

 

そもそも…ライターになる前の私は、リーマンショックのあおりをうけて就職難民になっていた。

大学を出て、就職をする…という一般的な軌道から、リーマンのおかげであっという間にはずれた。

正直自分でもびっくりだったが、凹んでいるだけも癪だったので、とある国の準社員として子供から大人までいろんな人に夢と希望を売ってみたり、ふと思い立って大手の鉄道会社で駅員をしてみたりもした。

この頃は、やりたいことも自分に向いている仕事もよくわからなかったし、働くってそんなにめちゃくちゃに楽しいことではないと思っていた。

 

まあ…さほど責任のないアルバイターとして夢の国での暮らしは、心地よいといえばよかった。

そのあと飛び込んでみた鉄道の国では、酔客やら、振り切れた個性を持った客に絡まれたこともあり、暴力反対ポスターが嘘ではないことを肌で感じた。あの世界はすごい。

寝坊をすると「シャッターが開かなかった!」と新聞に載せられてしまう仕事だし、とにかく激務である割に仕事の内容と給与が全く見合っていない。(今だからわかる)

「遅刻する夢で起きた」と同僚と笑い合った経験も…数えきれない。

 

考えてみれば

数人 対 ×万人

という戦いの場所にばかりいた。

 

変わりばえのない日々なんて都市伝説だ…と思ってしまうくらいに私がいた世界にはアクシデントが満ち溢れていて、正直武者震いする日もあった。

けれど…ふとした瞬間、現実が見えるのだ。

とくに、人身事故の放送をしている時と、事故処理のあとだ。

 

「お客様にはご迷惑をおかけし、申し訳ありません。運転再開までしばらくお待ちください」

 

マイクでロボットのように繰り返し、頭を下げ、振替の案内をする。

ほとんどのお客さんは「大変ね」とお行儀よく待ってくれるが、これが夜の遅い時間だと大変なのだ。帰れなくなるかもしれない人が暴徒と化す。

わかる、私も絶対疲れているときに電車が止まっていたら怒る。

でも、怒られている私たちはなんら悪いことはしていないはずで、魔がさすのだ。

 

「私はこの仕事を一生できるだろうか?」

 

毎日感じていた理不尽さが、2012年のある日の私に筆を取らせた。

たしか課題を書いたのは、夜勤明けの朝だったと思う。眠たい目をこすって、がむしゃらに短編を書いた。

 

とにかく、この世界から逃げ出そうと思った。

まさか、たった3000字の課題がこんな未来につながっているなんて、その時は本当に考えもしなかった。